橈骨・尺骨骨折の手術には、大きく分けて、プレート固定、髄内固定、創外固定があります。病院や獣医師によって術式が異なります。それぞれに一長一短があり、骨折の程度や骨の状態、動物の性格、飼い主の術後管理などを考慮して、手術方法を決めます。

プレート固定；プレートと呼ばれる穴の開いた板状のもので骨折部をネジで固定する方法です。
メリットは強固な固定が得られ、粉砕骨折（骨がばらばらに折れている）状態でも手術可能です。手術後の外固定が不要か短期間ですみます。
デメリットは手術の傷が大きくなり、骨の周りの筋肉も大きくはがすために、骨へのダメージが強くなります。手術時間も長くなり、体への負担も大きく、感染も起こしやすくなります。手術の基本手技を守らないと必ず失敗します。また、使用するプレートやネジが大変高額です。

髄内固定；専用のピンを使用して、骨の中心の骨髄の中に入れて骨折部を固定する手術です。
メリットは、手術の傷が小さく、骨の周りの筋肉もはがしません。そのため手術も短時間で終わり、骨へのダメージも最小限で済みますし、体への負担も少なく済みます。骨折の治りもプレート固定に比べ早く、より自然に近い治癒が得られます。
デメリットはプレート固定に比べ固定力が弱く、外固定が３～４週間ほど必要となります。一見簡単そうに感じますが、熟練した獣医師でないと、難しい手術になります。特に術後の外固定の方法に慣れていないと、合併症を起こしやすいです。粉砕骨折には特殊なピンが必要で、橈骨・尺骨骨折では使用できません。

創外固定；骨に数本のピンを皮膚の上から刺入し、レントゲンを見ながら骨折部を整復して、そのピンを専用の固定装置やパテなどで固定する方法です。
メリットは、骨折部を切開せず、あるいは切開しても小さな傷で済みますので、骨へのダメージが最小限に済みます。また、関節内の骨折や粉砕骨折にも対応できます。熟練した先生が手術をおこなえば、治りも早く、より自然に治ります。
デメリットは、皮膚からピンが出ていますので、感染が起きやすく、ガーゼ交換などの術後の管理が大変です。ピンが出ていることで、犬にも大きな負担がかかります。

当院では基本的に、髄内固定を推奨しています。もちろん骨折の状態や場所などによってプレート固定をおこなうこともあります。
手術前より十分な鎮痛剤を使用し、手術時間も特別な場合を除き、髄内固定では15分ほどで終わりますので、術後の痛みも軽く済みます。
入院は手術日を入れて３日間です。